ひぐらし日記

ひぐらしパソコンにむかいて日々の些細事をチマチマとつづる日記です。

母の短歌

今頃の季節になると思い出す母の短歌があります。

  今朝はきたる草履の冷えにとまどいぬ怠惰に長き夏をすごして

朝、土間に降りようとして何気なくつっかけた草履(今の着物用ではありません)が、ひやっとして「あぁもう秋だなぁー」と気づき、怠惰にすごした夏への反省もしているという内容です。

40年前の母の作ですが、気分が良くでた繊細な表現の歌だと思います。

この歌を本歌にして、私が読んだ初秋の短歌は。

  わが母が草履の冷えで知りし秋 吾は便座の冷たさに知る

品のないことこの上なくて、お恥ずかしい限りですね。(^^;)

母の短歌は、素朴で飾り気が無く、けれんみも無く、誰が読んでも分かりやすくて共感を覚えるものばかりです。

  汚れたる作業衣小川に洗いおれば稲田吹く風髪にやさしき

  農婦吾にそぐわぬワルツ聞きながら娘待ちおり茶房の隅に

  今朝吐きし言葉悔いつつ汗じみたる夫の作業着丹念に洗う

  久々に逢いたる友の装いに土つきしモンペ幾度も払いぬ

そのあまりのわかりやすさに、若い頃の私は価値を見いだせず、一時は「私の方が上手い!」と思っていた時期がありました。
30代前半の作歌が面白くてたまらなかった時期、いくらでも作品が溢れるように詠めた頃。
毎月のように短歌祭に応募しては入賞して、トロフィーや盾を持ち帰って、天狗になっていた頃のことです。

母の歌が、陳腐で幼稚に見えて仕方がありませんでした。

それが「やっぱり母には敵わないなぁー」と思うようになったのはここ数年来のことですね。

分かりやすい=幼稚ではなく、難しい内容を簡単に詠むことは如何に大変かがやっと分かってきました。
地味だけれど、ありふれた日常をそこはかとなく味わいがあるように作品化する力は母には敵いません。

私より20年以上経験が長い分、いつまで経っても追いつくことは難しいようです。

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